2007年より、ブラジル、ベルギー、フランス、スイス各地で個展。2013年にはアメリカデビュー(カリフォルニア州パームスプリング)。2014年パリ、エロティスム美術館において半年間「私は女~io Donna」を展示。「私とモデルの仲間たち」「女友達」シリーズで女の身体の美しさを表現する一方で、「夢と秘密」「恍惚のマリアマグダレーナ」ではセックスを、「聖母子」「クリニック」では母体の悲喜を、「ラ・カルネ」では肉体と病気を、と「女をとりまく360度」をテーマとした作品を生み出している。
ダイアニが初めて日本に来て、しかも「個展をやりたい」と言ってきた時、「一体どんな写真を出したいの?」と聞きました。そしたら、「女性のヌード展だ」といいます。送ってもらったら、とてもきれいな写真でした。総勢18人のモデル仲間を撮った「白と赤のヌードシリーズ」。パリでは好評だったそうです。そういうわけで私はダイアニは「きれいな女の人のヌード写真」の写真家だと思っていました。しかし、彼女の作品を紐解くと「単にきれいなばかり」ではない写真もたくさんあることがわかりました。
私が「赤い肉体シリーズ」を初めて目にした時、最初はひいてしまいました。一見すると、美しい女の人(ダイアニ本人)が、ヌードで「花束を抱えている」。よく見るとその花束って思っていたものはなんと、心臓なのです。それは屠殺場で、牛の内臓を使用して、撮り下ろした作品でした。その赤い写真を紐解きながらダイアニは言いました。「これって人間共通の主題なの。みんな、身体の中には血が流れてるでしょ。自分の心臓の声を聞いたことある? 自分の肺のこと思ったことある? 心配になるとお腹痛くなるでしょ、それって腸が悲鳴あげているのよ。」確かに言われてみれば、そうだな、と思いました。私たちみんな身体の中はドロドロなのです。でも、そんなことないかのように、暮らしている。おしゃれして、顔にはお化粧して。本当は身体の中は皆一緒でドロドロなのに。それが、ダイアニが屠殺場で体当たり撮影をした今回日本で発表する、「赤い肉体シリーズ」です。私はとても美しい写真だと感じます。
もう一つ、私が初めてダイアニに会った時の事、それは8月のパリでした。初対面なのに「5月に流産しちゃったの」なんて言います。普通そういうことってあまり言わないのに、彼女はブラジル人だからオープンなのかな?なんて思っていました。しばらくして、パリで個展をしているダイアニに再会しました。作品の中に赤ちゃんにおっぱいをやっている女性の写真があります。モデルは彼女自身です。でも、その表情がどうも暗くて何か変なのです。よく見ると抱いてる赤ちゃんが造り物のようでした。「これはどういう写真?」と聞きました。それは彼女が流産した時、その病院で、その日に赤ちゃんのお人形を買ってきて貰って、担当の女医さんに 「写真を撮って」って頼んだのだそうです。辛過ぎる表情。そのはずです。体全体が泣いている写真でした。
ダイアニは、女性の人生全体を「美しく快楽的なテーマ」から「引き裂かれるような悲壮なテーマ」まで、そのすべてを材料に写真作品シリーズを制作しているのでした。その両極を提示しながらも、圧倒的な美しさを誇る写真作品を、是非日本の方に、彼女の姿、彼女の構想、彼女の勇気を含めて見てもらいたい。そう思います。(通訳:えっちゃん 【イシイ・インターナショナル代表】いしいえつこ)