ケシの主張
6、7年前、書店で澁澤龍彦の「エロティシズム」という悩ましいタイトルにひかれ恥ずかしかったけれど、買い求めました。夜、寝る前にページを開くと、「花とは植物の性器である」とあり、びっくりして咄嗟に「えーーっ!」と声を上げてしまった。
それ迄の私は植物に全く興味がありませんでした。
翌日から近所を歩く時、各家のお庭に咲く花々を見ると、なる程、渋澤さんのおっしゃる通りでした。お花はセクシーだったり、私に微笑みをくれたり、挑発されたり、愛しかったり、私を見て、と哀願されたり、心豊かにさせてくれる存在になりました。
私が住む恵庭(えにわ)市島松は札幌と新千歳空港のほぼ中間に位置し、ガーデニングが盛んで、春から秋迄、様々な種類のお花が咲き、植物を撮影するには大変恵まれています。
「ケシの主張」に展示する写真は、自宅から徒歩18分以内の範囲に咲いているケシを撮影しました。お花1輪、木1本、それぞれに魂が宿っているのでは、と思えてなりません。
阿部敏子 Toshiko Abe プロフィール
北海道生まれ 1983年
札幌で七宝個展を催し、1996年から石塑で唇、乳房、両性器をモチーフにレリーフ、立体で制作する。
主に札幌、銀座にて新作個展21回、グループ展8回。
今回、初めての写真展を催す。