フランス、パリ市の西部に位置するブローニュの森。セーヌ川に隣接し、場所によってはエッフェル塔が望める広大な森(846万平方米)。都会の喧騒から離れた静かな空間は、昼は市民の憩いの場として、週末は散歩やジョギング等を楽しむ人達で賑わう。
2005年4月と2009年5月の2度、この地を訪れた。
4月になると冬の暗鬱な空と寒さを乗り越えた植物は、陽光下、一斉に芽吹き、鮮やかな黄緑の色合いを作り出し、生命の躍動感で溢れだす。
古来、俗界から隔離した森には、精なるものが宿るという俗信がある。
陽が傾き、新緑の葉は茜色に染まり、辺り一面静寂に包まれていくころ、この森にはどこからともなく、光沢の衣をまとい肌の露な貴婦人たちが姿を現す。
性なるものが宿る、ブローニュの森。(中田柾志)
中田柾志プロフィール
1969年 青森県弘前市生まれ
2002年 個展 NCアートギャラリー(東京都中央区京橋)
2003年 個展 NCアートギャラリー(東京都中央区京橋)
2005年 公募展 写真新世紀で『ブローニュの森』が佳作賞受賞
2012年 ヴァニラ画廊大賞 奨励賞
都築響一氏のメールマガジン【ROADSIDERS'
weekly】で写真家中田柾志『ブローニュの森』が特集された。
中田柾志という写真家の存在を知ったのは、彼が2005年から2009年にかけて撮影された、ブローニュの森の娼婦たちを捉えたシリーズだった。銀座ヴァニラ画廊が公募した作品展で、審査員を務めることになった僕は、審査会場で中田さんの作品と出会った。いかにもヴァニラらしい(?)ビザールな絵画や人形などの立体作品が並ぶ中で、彼のストレートで硬質なプリントはひときわ異彩を放っていたのだった。(都築響一・【ROADSIDERS' weekly】より)