Gallery Lucifer present's
2017年2月6日(月)~2月19日(日)
平日(月~金)12:00~19:00、土・日・祝・最終日:12:00~17:00
展示室B・入場料500円(展示室A&B共通)
この度、ヴァニラ画廊ではデカダン芸術蒐集家”Gallery
Lucifer”のあるじによって厳選された、
シュルレアリストのピエール・モリニエ(1900-1976)のコレクション展を開催いたします。
数ある作品の中でもフェティッシュな性的ファンタジーを内包するフォトモンタージュをはじめ、
生涯で20点程しか制作されなかった銅版画、長い無名時代を経てアンドレ・ブルトンに見出されて
開催された初個展時のカタログ等、多岐にわたるコレクションを出展。
あらゆる倒錯的な性愛に耽溺し、自身の生涯さえも拳銃自殺によって完結した、
異端のシュルレアリストと呼ぶに相応しい孤高の存在、ピエール・モリニエの核心に迫ります。
ピエール・モリニエ芸術の属性を成すものは、社会に対する心理現象の客体化ではなく、本能的な人間の衝動と、その展開と組織化によって成される自己実現の過程、更にその主体的行為を制圧し阻害する一切に対し向けられる極端な政治的な怒りの表出である。 芸術とは一文化の形式や風俗を指すのではなく、あらゆる事態との超越を通して、自己実現の能動性へと存在すべてを投じる、精神と行為の抜き差しならぬ内的必然性のことである。 人間の認識メカニズムである主観と客観の動きを巧みにコントロールする技術を持つ社会の渦中にいると、知覚の磁石はひどい混乱を起こし麻痺状態に陥る。麻痺したままで何かを考えようとするから物事が難しく思え、社会の作り上げた価値体系に従った方が楽に思える。かくしてそれらは相対的な観念となり、存在すべてが受動的なものでしかなくなってしまう。 こうした関係の中から生まれるあらゆる物の大半は創造性などひとかけらもない、それ自体人間の受動性の証でしかないようなものばかりだ。これを乗り越えるのはあくまで自発性に基づいたディシュプリンしかない。モリニエは禁欲主義的に自己の性癖をより先鋭的に芸術表現へと昇華した。それらは観る者、共感者を過分に限定するが、それこそが本来の芸術表現というべきものであろう。 最も傷つきやすいものこそ最も強靭であり、最も異質で孤立したものこそが、最も大きく開かれたダイナミズムを持ち得る。 その意味では性的マイノリティーなどというご都合主義的な詭弁ではなく、モリニエは明らかに異端者である。異端者とは社会から阻害されたものたちであり、極悪な野蛮と同意である。しかし、そのような人間からこそ真の芸術性をもった仕事は創造されるのであり、モリニエは通俗的な公共性をもった、資本主義的なブランドと結びついたエセ芸術を認知する感性とは真反対の極北のシュルレアリストであり、真の意味で政治的でアナーキストである。(Gallery Lucifer)
フランス・アジャン生まれ。幼少時にイエズス会で聖職者となるために学ぶも、絵画に目覚め風景画を描き始める。18歳の時、最愛の妹を失ったことが後の作風に大きな影響を与える。3年のパリ滞在の後、創作の拠点をボルドーに移し印象派風の風景画、肖像画を描く。1940年代に至り主に女体を描くようになり、アンデパンダン展に出品を重ねるも、猥褻とみなされ長く不遇の時を送る。1955年、アンドレ・ブルトンに見いだされ初個展を開催。それきっかけにシュルレアリストたちから多大な影響を受ける。晩年はフォトモンタージュで独自の表現を確立するも1976年に拳銃自殺を遂げた。