オープニング・レセプション 8月24日(月)17時〜
「Hide and Sex」とは、サディズムとマゾヒズムに対して現代の日本人女性が非常に特殊化しているということを前提に、彼女達の精神世界を多角的に検討しようという試みである。
たとえば、ともすると我々をも禁忌的な秘密裏の世界へといざなわんとするSMホテルの、あの特異な空間装飾に代表される仮想世界ともいうべき「閉鎖的ユートピア」が彼女達の精神性と密接な関係を持っていることは間違いないだろう。ただし、それがあくまで提供されたものの上に成り立っていることは留意すべきで、そういった意味で彼女達は永遠の享受者であることは無視できない。つまり、ナタリー・ダウが今回の新作展覧会で提示したいのはそういった具体的事例に基づく、より実践的なアプローチなのである。現実よりも幻想の中で生きようとしている彼女(もしくは彼)達へ。ナタリーのメッセージは、そのような現実社会を逸脱した、きわめて個人的な≪誰か≫のために発信し続けられるものなのだ。
人間の行為は全てが必然である。それらは何かしらの事実、もしくは欲望に基づく絶対的なもので、その不可避とも言うべき人間の性に、わたしをずっと魅了され続けている。現実と非現実——その境は曖昧で不明瞭で、意識下において行われるという意味ではむしろ同じものだとも言えなくはない。今回は、そのあやふやな〈虚〉と〈実〉の間を揺れる、極めて抽象的な感覚の視覚化を試みた。もちろんそれは非常に実験的なものであったことはいうまでもないだろう。茫洋とした中で模索を続けながらも、旧来の技術に基づいた新手法を用いて、「写真」という媒体をさらに次のものへと昇華させる。それが、わたしが考える一芸術家としての使命なのである。
(NATHALIE DAOUST)ナタリー・ダウ
NATHALIE DAOUST
ナタリーダウ プロフィール
カナダのモントリオール出身。the Cegep du Vieux-Montrealにて写真の技術を学び、1999年、ニューヨークのカールストン・アームズ・ホテルで行われた初の個展「New York Hotel Story」では、見る者に強烈な印象を与えるとともに、彼女の芸術性を、またその名を広く知らしめることに成功した。彼女はそれ以降、「TOKYO Girls」「Entre Quatre Murs」など、常に目新しい主題で作品を発表し続け、カナダ、アメリカ、英国、フィンランド、フランスなど数々の個展やグループ展を開催している。